製薬会社に限らず、外資系企業やITベンチャーなどで広く取り入れられているRSU(Restricted Stock Unit)、転職活動の際に目にする機会なども増えてきたのではないでしょうか?
細かく調べると税金の点など細々としたルールがありますが、実際に付与されてから調べても大丈夫な事が多いので、まずは大雑把にRSUの基本とメリット・デメリットを確認しましょう!
- 働いている会社の株式を数年にわたって、譲渡してもらえる!
- 会社の株価が上がれば、現金での報酬よりも大幅な額のインセンティブになる可能性がある!
- 株価が暴落すれば、想定していたよりも低い報酬になる、最悪は紙きれになる可能性がある!
- 複数年にわたって、譲渡されるため、ある程度長期での勤務が必要
- RSU制度の概要
- RSU制度のメリット・デメリット
- 類似制度ストックオプションとの比較
- 転職の際にRSUを付与される際のチェックポイント
RSU(Restricted Stock Unit)とは
RSUは、「Restricted Stock Unit」の頭文字を取った用語です。英語をそのまま直訳すると、制限が付された株式の単位、となりますが、実際の意味合いは異なります。日本語訳的には、「譲渡制限付株式報酬」となり、株式支給による報酬の制度を指します。
株式報酬とは聞きなれない言葉ですが、自身が所属する企業の中長期の業績や株価に連動して、役員や従業員に対して支給する、業績連動報酬の一種です。
なじみ深いのは「業績が良かったからボーナス出る!」という賞与が一般的ですね。賞与は現金報酬とされ、株式報酬と並んで業績連動で支給されるインセンティブになります。
どちらも好業績の場合に、役員や従業員に支払われる報酬となりますが、なぜ株式報酬であるRSUが徐々に採用されるようになってきているのでしょうか?
RSUなどの株式報酬制度のメリット
株式報酬制度のメリットとしては、株価に連動するため報酬の仕組みが明朗であるという点が挙げられます。
現金報酬についても個人業績等に対して付与されるものであれば、付与ルールが定められている場合は明朗なケースもありますが、業務内容や業種によっては、その取り決めが難しい事もあります。
一般的に株式報酬については、株式の価値(株価)に連動するように設計されているため、上場企業で公に株式の売買が行われている場合は、株価と連動する形で報酬額が決定されるため、企業側、従業者側双方にとって、明朗な仕組みになっています。
受取側(従業員)のメリットとしては、ベンチャー企業などで株価が大幅に上昇した場合、想定していたよりもかなり大きな額の報酬を手にできる可能性があります。
会社側のメリットとしては、現金の支出を伴わずに報酬を支払う事ができる点と、複数年に分けて権利の解除を行うため、従業員の雇用継続を促す効果が期待できる点です。
RSUに利用するための株式は新株を発行することで調達するため、会社としては現金の支出を行わず実施することが可能です。また、RSUで付与する株式報酬については、勤続年数に応じて段階的に解除されて実際に付与されるケースが多いため、RSU期間中の退職を抑制する効果が期待できます。
RSUなどの株式報酬制度のデメリット
RSUのデメリットとしては、株価変動のリスクが挙げられます。株価と連動していることは明朗な報酬制度などの点でメリットでもありますが、会社の業績とは関係なく外部要因などで株価が大幅に下がることなども起こり得ます。
業績が好調だったとしても、それが株価に反映されない事も株式市場ではよくあることなので、その点について注意が必要です。
また、譲渡されたタイミングで株式の評価額分を給与として受け取った形になり、給与所得としての課税がされてしまいます。(その時に売却していなくても、受け取ったタイミングで税金がかかります。)
外資系企業の場合、年末調整等を行ってくれないケースもあるので、心配な場合は税理士などの専門家への相談の検討も必要です。
会社側のメリットとして記載しましたが、RSUは設定された複数年の勤続年数に応じて数年にわたって譲渡制限が解除されるように設計されているので、海外ではgolden handcuffs(黄金の手錠)と呼ばれて、表現は良くないのですが「従業員を縛り付けておく報酬の支給手法」と揶揄されるケースもあります。
RSUの付与期間は数年に分けて実施される場合、すべての権利を得るためには付与期間が満了するまで、在籍する必要があります。もちろん残っている期間の付与権利を放棄すれば、退職することはできますが、自由な転職活動に一定の抑止力がかかってしまう点は考慮が必要ですね。
メリット | デメリット |
---|---|
現金報酬よりも高額の報酬になる可能性がある。 | 株価の影響で株価が下がると価値が低下する。 税金面で手間がかかることがある 複数年にわたっての継続勤務が必要になる。 |
表でまとめると、メリットよりもデメリットの方が多く感じてしまいますが、会社側としては、賞与など現金の支出を伴う現金報酬より、支出に対する負担がすくないため、RSUなどの株式報酬の方が実施しやすい為、現金報酬よりも多めの株式報酬が設定される傾向があります。
メリットとして挙げている、高額の報酬になる可能性があるという点についてですが、製薬会社の株価は新薬開発などによって数年で数倍になることも珍しくないため、RSU付与時に100万円で想定していた株価が、譲渡制限が解除されたタイミングでは数倍の価値になっていることもあるため、金額が固定されている賞与などの現金報酬よりも個人的には夢がある制度だと思います。
ただし、その逆で100万円で想定していた株価が数分の一になることもあるので、ご注意ください。
RSUとストックオプションとの違い
転職活動を行う際に、RSUという言葉は以前より良く耳にするようになりました。株式報酬という仕組みについては、なんとなくご理解いただけたかと思いますが、株式報酬という制度にはそのほかどんなものがあるのか、確認してみましょう。
ストックオプション(SO)の特徴
ストックオプションで大金持ち!みたいな言葉を以前はITベンチャーなどでよく聞いていた気がします。ストックオプションは、「将来、株を安価に購入することができる権利」を付与される制度です。(株式を付与されるわけではないので注意)
例えば、会社が創業されたタイミングでは会社の価値はまだまだ低い状態ですよね。その時の株価を1株1万円だったとして、将来、会社が大成功して株式公開したタイミングでは、株価は1株100万円になっていることもあります。
事前にストックオプションが付与されていれば、1株100万円の株を1万円で購入することができるといったような制度になります。100万円の株を1万円で購入後、株式市場で100万円で売却することで99万円の利益を手に入れることができます。
会社が急速な成長段階である企業には適した制度ですが、すでに株式公開してしまった会社やある程度の規模に成長した段階では、株価が一気に100倍になるというようなケースがすくないため、初期のスタートアップ企業などに適した制度といえます。
製薬会社などのようにすでに、ある程度成長している企業ではSOを受け取る側にもメリットはそれほど多くない制度といえます。
また、ストックオプションは行使にお金がかかってしまう点もデメリットとして挙げられます。例えば株価が1.5万円となったタイミングで、行使価格1万円のストックオプションを行使する場合には、行使価格である1万円の支払いが必要になり、行使価格の1万円を差し引くと手元に残る利益は5千円になります。
そのため、かなり大きな株価の上昇が見込める場合以外では株式報酬としての魅力は減ってしまいます。
業界は異なりますが、IT業界ではフリマアプリでおなじみのメルカリが、以前はストックオプション制度を導入していましたが、株式公開後はRSUに株式報酬制度の切り替えを行いました。
国内でも株式公開後に優秀なスタッフの確保と継続雇用を目指す会社は今後もRSUの導入を進めていくのではないでしょうか?
【参考外部リンク】
日本初の挑戦を。メルカリが新インセンティブ制度に込めた想いとその舞台裏
RSUはストックオプションのように、株価が数倍や数十倍に上昇しなくてもメリットのある制度ですので、すでに大手企業といわれる会社でも導入が進んでいます。国内では、日産自動車や日立製作所なども導入を進めています
【参考外部リンク】
日産自動車プレスリリース「株式報酬制度の導入に関するお知らせ」
日立製作所プレスリリース「譲渡制限付株式報酬ユニット制度の導入に関するお知らせ」
その他の株式報酬制度
そのほかにもRSA(譲渡制限付株式購入権付与)やRS(譲渡制限付株式)などの株式報酬制度があります。いずれも株式を報酬として購入出来たり付与されたりする制度ですが、一般職の転職ではあまり採用されているケースが少ないようですが、そのほかにも様々な株式報酬制度の仕組みがありますので、転職活動中に株式報酬制度の提示を受けた場合には内容について調べてみてください。
RSUを含む内定オファーを受けたら?
基本的には、実際のお給料にプラスするかたちでRSU付与についてオファーを受ける形になります。
まずはRSU以外のお給料面で自分が納得いく金額かどうか検討する必要があると思います。
メリットの点でもお伝えしましたがRSUは結果的に大きな報酬として受け取ることができる可能性がある反面、景気の状況によってはかなり目減りしてしまったり、最悪は紙切れになってしまう可能性もゼロではありません。
そのためまずは実際の現金での給与額を重視することをお勧めします。ただ、実際にはこのRSUの制度を良いタイミングで利用できたため、RSUでの利益が給料額を超えている人もいたりするので、夢のある制度の一つとして、RSU制度を活用している企業を転職先に選択するのもいいと思います!
国内企業でもRSUを導入している企業はありますが外資系企業の方が積極的にRSUを導入しています。
RSUは募集時の待遇として公表されているケースは少なく、個別の内定オファーとして提示されるケースが多いようです。
募集先企業によってもその傾向は異なるようなので、転職エージェント等を通じて情報収集を行う事をお勧めします。