薬局のあり方が今までと大きく変わろうとしています。
2021年8月1日に施行される改正薬機法で、薬局のあり方が今までと大きく変わろうとしています。『地域連携薬局』と『専門医療機関連携薬局』という特定の機能を有する薬局の認定制度が導入され、患者自身が自分に適した薬局選びをできるような制度改革を国として行っていくようです。
では具体的に、『地域連携薬局』と『専門医療機関連携薬局』とは何なのか、どのような条件を満たせば認定されるのかなどを見ていきます。
地域連携薬局
他の医療提供施設と連携し、地域包括ケアシステムの一員として地域の患者の服薬を支援する薬局
ここで、従来の『健康サポート薬局』と何が違うかというと、どちらも“かかりつけ薬局”という点では機能は同じですが、『健康サポート薬局』は地域住民の健康維持に関する相談、一般用医薬品の取り扱いなどの“予防医療”に重点をおいているのに対し、『地域連携薬局』は入退院時の患者の情報提供、在宅医療への参画など“患者が病気になった後”に重点を置いています。
~専門医療機関連携薬局~
がん等の専門的な治療を行う医療機関と提携し、より高度な薬学管理や高い専門性が求められる特殊な調剤に対応できる薬局
それぞれの薬局の認定基準について
詳細は厚生労働省通知の認定基準概要一覧を見て確認していただきたいですが、認定を受けるのにキーとなる基準(個人的にハードルが高そうだなと思う基準)を以下に述べます。
地域連携薬局
・座って服薬指導や健康相談が受けられ、パーテーションなどで区切られる等の情報漏洩がしにくい構造設備になっていること
・他の医療機関との連携体制を構築したうえで、合同会議などに継続的に出席すること
・薬局から医療機関に対し、過去1年間で月30回以上の報告(入退院時や在宅訪問時の情報共有)をしていること
・薬局の開店時間外(休日・夜間含む)に対応できる体制を構築すること
・麻薬や無菌製剤の調剤をできる体制を構築すること。無菌調剤設備は他の薬局との共同利用も可
・薬局に週32時間以上、1年以上常勤勤務する薬剤師の半数以上の配置
・地域包括ケアシステムに係る研修(健康サポート薬局に係る研修でも問題ない)を修了した薬剤師を、常勤勤務する薬剤師の半数以上の配置など
専門医療機関連携薬局
・座って服薬指導や健康相談が受けられ、個室等の情報漏洩がしにくい構造設備になっていること
・薬局の開店時間外(休日・夜間含む)に対応できる体制を構築すること
・専門医療機関の会議などに継続的に出席すること
・薬局に週32時間以上、1年以上常勤勤務する薬剤師の半数以上の配置
・傷病の区分「がん」に係る専門性を有する常勤薬剤師の配置
・従業員に傷病の区分「がん」に関する研修を定期的に実施
など
地域連携薬局と地域支援体制加算の違い
地域連携薬局と専門医療機関連携薬局は、2021年6月時点で調剤報酬の加算要件ではありません。
一方で、「地域支援体制加算」の算定要件と、『地域連携薬局』の認定要件はよく似ています。
どのような点で異なるのか、見ていきます。
地域支援体制加算(調剤基本料1を算定する薬局の例)
・開局時間外の対応;あり
・特殊調剤の対応;麻薬
・医療機関への情報提供;年12回以上
・在宅患者訪問薬剤管理指導料の算定回数;年12回以上
・常勤する薬剤師の勤務条件;かかりつけ薬剤師が勤務
・薬剤師に求められる条件;研修認定制度等の認定薬剤師
地域連携薬局
・開局時間外の対応;あり
・特殊調剤の対応;麻薬・無菌製剤
・医療機関への情報提供;月30回以上
・在宅患者訪問薬剤管理指導料の算定回数;月2回以上
・常勤する薬剤師の勤務条件;半数以上が1年以上の継続勤務
・薬剤師に求められる条件;地域包括ケアシステムに係る研修または健康サポート薬局に係る研修を修了した薬剤師
認定をとるにあたっての障壁
すべての薬局が『地域連携薬局』『専門医療機関連携薬局』の認定を取れるようになればいいですが、薬剤師の人員不足またはシフトをなんとかまわせるギリギリの人数しか薬剤師を置いていない薬局がまだまだ多いように感じます。
日々の通常業務で疲弊しているなかで、さらに休日や夜間も対応、他の医療機関の会議に参加するなどの負担も増えるとなると、勤務する薬剤師の人数を増やさない限り対応できないように思います。
また、店舗が狭い薬局も多く、相談スペースや無菌製剤の調剤設備を作るのもなかなかハードルが高いと思います。
これからの時代を生き残れる薬局とは
『地域連携薬局』や『専門医療機関連携薬局』の制度ができる背景としては、副作用や併用禁忌のリスクがある多剤投与をしている高齢者の患者がとても多いこと、がんや糖尿病の在宅治療の増加があげられます。
病院から退院後も、かかりつけ薬局でサポートを受けながら継続して治療が受けられる体制を整えようとしています。
これは一見とても良い取り組みのように思えますが、中小や個人薬局にはなかなか厳しい状況になっていくでしょう。 人員が少なく資金力が小さい薬局は、開局時間以外の休日や夜間の対応、無菌製剤の調剤設備の設置・相談用の個室の設置などが難しいからです。
その点は大手薬局やチェーンのドラックストアは資金力も人員も潤沢にありますし、認定を取得することは小規模薬局よりは難しくないと思われます。
将来薬局を開業することを目標にしていた薬剤師・薬学生にとても衝撃の大きい制度改革です。この改革で就職先・転職先を改めて見直す薬剤師の方も多いのではないのでしょうか。
上記に述べたように、『地域連携薬局』と『専門医療機関連携薬局』は2021年6月時点で調剤報酬の加算要件ではありませんが、今後どうなるか調剤薬局業界の動向に目が離せません。