TBSの医療ドラマ「ブラックペアン」の最終回が終了しました。
このドラマの中で、加藤綾子さんが演じる「治験コーディネーター(CRC)」の描写が現実と乖離しているとして、2018年5月7日付で「日本臨床薬理学会」はTBSに対し抗議の見解書を送付し、ネットなどで物議を醸しました。
TBSは抗議に対し、「フィクションである」と回答しています。
ドラマはフィクションの世界ですから、現実と違って当然です。何故、抗議をするに至ったのでしょうか。
認知度の低すぎ?「治験コーディネーター」
理由の一つとして、「治験コーディネーター(CRC)」という職種は世間の認知度が圧倒的に低いことが挙げられます。
医療関係者の中でも、ご存知ない方もいるでしょう。
例えば、医師がドラマの中で現実と違って、悪役に描かれていても、視聴者はフィクションとして捉えることができます。
しかし、治験コーディネーターの場合、視聴者には判断材料がないため、「治験コーディネーターって、そうなのか」と真に受けてしまうのではないかという懸念が生まれます。
「日本臨床薬理学会」は治験コーディネーター(CRC)の研修や認定を行っており、見解書の中で「番組により患者さんが治験コーディネーター(CRC)という職種に不信感を持ち、治験を通じた新薬・医療機器開発へご協力を頂けなくなるとしたら、それは医療イノベーションを目指す日本にとって大きな損失につながります」としています。
治験コーディネーターの仕事って?
CRCの業務は多岐に渡り、被験者候補となる患者さんに対する主な役回りは、以下のような業務があります。
CRC業務
・患者さんが治験の内容をよく理解できるよう医師の説明をわかりやすく補足
・来院スケジュールの管理や被験者が治験を安心して続けられるようケア
院内にCRCがいない場合、CRCは専門の会社から派遣される事が多く、病院とCRCの所属会社間で契約を締結して院内で作業を行います。
なぜカトパンは炎上したのか?
患者に対して支払う費用がありえない
患者さんに対して多額の金銭を支払うこともありません。
「負担軽減費」というものが、治験のために来院いただく場合の交通費や再診料などの負担を軽くする目的で設けられていますが、大体1回の来院につき7,000円~1万円程度をお支払いするのみです。
医師に対しての接待がありえない
またかつては、製薬会社の人たちが医師たちを高級クラブやゴルフ接待して豪遊させることも実際にあったようです。
しかし、そのようなことから、治験の結果が企業に有利になるようデータを歪めたりするようなことが疑われてしまいます。
医療界では世界的に企業との癒着(利益相反)が問題視され、日本でも製薬業界が接待費に上限を設けるようになりました。
治験コーディネーター(CRC)について、正しく理解されることが大事
今回の抗議によって、 “治験コーディネーター”という仕事の認知度が向上しました。
しかし、現時点では名前だけが一人歩きしており、実情を理解している人はまだ少ないでしょう。
皆さんが、「治験コーディネーターって何だろう?」と興味を持ち、正しく調べていただけたら嬉しく思います。